2015年03月11日

専門的知識等を有する有期雇用労働者に関する特別措置法等の説明会

 先週6日の金曜日に京都労働局の主催で開催された「専門的知識等を有する有期雇用労働者に関する特別措置法等の説明会」に出席しました。主なテーマは次のとおりでした。
(1)専門的知識等を有する有期雇用労働者に関する特別措置法について
(2)勤務地などを限定した「多様な正社員」の円滑な導入・運用について

 (1)は、平成25年4月施行の改正労働契約法で新たに導入された有期雇用労働者に係る「無期転換ルール」の特例に関するものですが、昨年4月に施行された「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」による改正労働契約法の「無期転換ルール」の特例に引き続いての改正となります。
 今回の特例措置は、@高度専門職、A継続雇用の高齢者が対象となりますが、昨年4月の改正の場合と異なり、特例措置の適用に当たっては、厚生労働大臣への認定申請が必要となりました。この取扱いについては、@の場合は仕方がないとしても、Aの場合にも認定申請が必要ということに関しては、些か疑問があります。今後、さらに高齢化が進むことに伴って、高齢者の雇用問題は、どの企業でも起こり得る一般的なケースになってくるものと思われますので、認定申請などの手続きに拠らずとも、高齢者の雇用確保措置に係る労使協定や就業規則に付記するというような取扱いでもよかったのではないでしょか。
 ブラック企業が跋扈し、毎年、多くの過労死(過労自殺を含む)が生じているという我が国の労働環境を見ると、労働行政として他にもっとするべきことがあるのではないかと思ってしまいます。

 上記以外で印象に残ったことは、会場の出席者から「60歳定年制の企業で、60歳前から4年間(毎年契約更新)有期雇用契約であった労働者が、60歳以後も引き続いて1年以上雇用された場合、従前は、無期転換申込権が発生していたが、今回の特例措置では定年年齢以後の継続雇用期間は通算契約期間に算入しないものとされているので、無期転換申込権は発生しないのか」との質問がありました。
 これに対し、担当課長が「特例措置の要件は、定年後の有期雇用契約期間に限定されているため、定年前の4年間は通算契約期間に算入されると解される」と妥当な回答されていましたが、さらに付け加えるなら、「定年」とはあくまで無期雇用契約の終期を示す概念であり、質問のケースでは、当該企業が60歳定年制を導入していたとしても、当該労働者は有期雇用契約であったので特例措置の対象ではなく、60歳以後の期間も通算契約期間に算入され、無期転換申込権が発生すると考えられます。
 このように有期雇用契約の高年齢労働者が、60歳等の一定年齢で契約が終了(雇止め)するような場合は、一般的には「定年」ではなく「雇用上限年齢」と称するのが適切と思われますが、今後、今回の特例措置の適用対象者である継続雇用の高齢者に関しては、65歳以降に「雇用上限年齢」を設定しなければ、「高齢者の雇止め」という新たな問題が生じることが懸念されます。

 今回は、説明会に出席して感じた簡単な印象程度のことを書くつもりでしたが、書き出すとなかなか中途半端に止めにくいものですね。結構、長い印象記録になってしましました。
 (2)のテーマについては、今回は特に印象に残った点もなかったので何も書きませんが、また改めて、当該制度に対する私の考え方などを書いてみたいとおみます。

 なお、まったく話は変わりますが、一昨日の月曜日に、全国の国立大学及び大学付属病院に対して、別紙文書によりダイレクトメールを発送しました。
 別紙 ダイレクトメール送状.pdf

 よろしくお願いいたします。
 
posted by ポピー at 01:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 社労士

2015年03月04日

ホームページの開設

 昨日3月3日、予てから予告していた私のホームページが開設しました。
 URLは <http://www.pro-sr.jp/kashima/> です。
 また、覗いてみてください。

 「大学と病院に特化した人事・労務管理のコンサルティング・オフィス」というコンセプトは、これまでなかったかと思います。
 また、別途、このさくらのサーバーを利用した WordPress によるウェブサイトも製作中です。システムとしてはより発展性のあるサイトとなります。
 オンリーワンの特色を明確にして、昨日、開設したホームページともども、Q&A などにより中身を充実させていきたいと考えています。
 ご支援のほどよろしくお願いいたします。



posted by ポピー at 01:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 社労士

2015年03月01日

研修(補佐人の実際)と労使関係セミナーに参加

 先週、社労士業務関係の研修(補佐人の実際)と労使関係セミナーに参加しました。
 平成27年2月24日(火)は京都府社会保険労務士会主催の補佐人制度研修会「補佐人の実際」、25日(水)は中央労働委員会(近畿地方事務所)主催の労使関係セミナー「職場のセクハラ・パワハラ」です。

 前者は、昨年11月14日、第187回臨時国会の衆議院本会議で可決、成立した改正社会保険労務士法の補佐人制度に関するものです。
 今回の改正で条項が追加され、「社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができる」ことになりました。
 税理士の場合は、平成13年の法改正により、税務訴訟において、裁判所の許可を得ることなく出頭し、陳述することが可能になりましたが、社労士も、今回の改正で、その専門領域に関する事項について補佐人となって裁判に出頭、陳述することが可能となったということです。
 税理士が、裁判所の許可を得ることなく補佐人となることが可能となった背景には、従来、弁護士には税理士資格があるとの理由で裁判所が税理士の補佐人申請を却下してきたものの、税法に精通している弁護士は必ずしも多くないため、税務訴訟における納税者である原告の勝訴率が低かった、という現実があったとのことです。
 弁護士は社労士資格も有しているわけですが、社労士を補佐人にする必要がある場合とは、具体的にどのようなケースが考えられるのでしょうか。
 「社会保険労務士」の「労務」については、専門分野としている弁護士も少なくなく、「経営者側」と「労働者側」というような区分まであるという現状から推測すると、「労務」に関係した訴訟で社労士を補佐人に、というニーズはそれほど多くないものと思われます。
 一方、「社会保険」の分野については、精通している弁護士は比較的少ないものと思われますので、ニーズがあるとすればこの分野、特に、社会保険の実務と関連する領域や社会保険の中でも年金関係のように専門的かつ広範な知識が要求される領域などは、社労士が補佐人となる機会もあり得るものと思われます。ただ、社会保険各制度では、行政による審査請求や不服申立て制度等が整備されていることも考慮する必要があるかと思います。

 次に、労使関係セミナー「職場のセクハラ・パワハラ」については、講演とパネルディスカッションで構成で構成されていました。
 全体を通じ、特に印象に残った点は、セクハラ・パワハラに関する訴訟においては、一審と控訴審で真逆の判決が出ることが多いということです。セクハラ・パワハラの裁判においては、当事者間のやり取りがテープなどに記録されているケースを除き、客観的な証拠となるものが乏しく、原告及び被告並びに関係者の証言に基づいて判決が下されることが多いような印象があり、裁判官の心証により左右されてしまうからかなと思いました。
 このように思いを巡らせているとき、かつて、これと同じような印象を抱いたことを思い出しました。以前、セクハラとパワハラの判例集(各々400頁以上あり、合計で約150判例)の全体を通読したことがあり、読後、個々の判例の具体的な内容までは思い出せませんでしたが、全体を通じ、「合理的である」とか「不合理である」とかいうフレーズが多いなあ、という印象が残りました。この多くは、判旨の中で、原告及び被告並びに関係者の証言に対する裁判官の心証が述べられている件だったと思います。
 これらのことから、「セクハラ・パワハラ」として社会問題化して20数年以上経ったにもかかわらず、実際の裁判においては、まだまだ、明確な判例法理のようなものは定着していないんだなと思っていたところ、その翌々日の新聞に26日(木)の最高裁の「『海遊館』セクハラ発言訴訟」の上告審判決が掲載されていました。
 この判決は、セクハラの有無が争点となったものではなく、近時、増加傾向のあるセクハラ行為に対する処分の妥当性が争われた、所謂、「ファイトバック」に関するものですが、「セクハラ発言に対する処分の基準が示されたと受け止められ、今後、より実効性のある予防策がとれるようになる」との新聞記事に掲載された弁護士のコメントのとおりかと思います。さらに加えて、今後、訴訟の提起や裁判そのものに与える影響も看過することができないものと思われます。


posted by ポピー at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 社労士